共感を引き起こす魔法の様な能力をもつ方法。
フースラーはその研究著書「うたうこと」の中で、「歌とは、感情の流出である」と説いている。
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フレデリックフースラーの「うたうこと」は名著である。
あらゆるボーカリストはこの本を是非読んで欲しいと思う。
ボーカルスクールなどで普通に教えられている、常識とされている基礎練習などが否定されている。
もちろん、この研究著書をよく読む事で十分にその理由が分かるのだが、、、。
この本を何度読んでも、特にすでに歌が上手かったり、専門家になってしまっているとスコトーマになって肝心なところは読めていない。
目の前にあっても、重要性が低いものは見えないのだ。
なので、昔々は、野球と言えば「うさぎ跳び」であったが、、、「うさぎ飛び」が世界一上手になっても野球は上手にはならないと同様で、様々な基礎トレーニングはその結果としてのパフォーマンスとの相関関係をゼロから見直した方がよいだろう。
もちろん、それには高いIQが必要であることは間違いない。
ひとつふたつだけ、例を取ってあげてみる。
(引用開始)
歌手が呼吸に関して無条件に銘記すべき原則
1、まず機械的ー方式的ににやらせようとする「呼吸法」はどんなものでも(それについて書かれたもの含めて)、全て避けた方がよい。大抵のものは、半自然的なことをやらせようとしているから。
2、声を出そうとするとき、空気を一杯に吸い込んではいけない。そうしたところで息が長くなる訳でもなく、また、声が強くもならず、良く通る様にもならない。
(引用終了)
この2つのことを知るだけでも、この本を読む価値はあると思う。
実は、ここが分かるとかなりの歌手が抱えている問題の解決の糸口が見えてくる。
さて、前述した「歌とは、感情の流出である」というのは、フースラーの明言である。このBlogでも明言として、何度も紹介をしてきた。
しかし、この明言は半分はあたっているが、もう半分は説明が不十分である。ないしは、間違っている。
歌い手に、歌う気持ちがないのに歌えないという意味においては正解である。このことは、一番重要です。
つまり、歌う事が本当に好きな事つまり、自分自身が心から歌おうと思うゴール(情動と仮に言い換えていいと思いますが、、、)こそが、何にも先んじて歌のパフォーマンスを最大限に引き上げる重要な要件であるという意味でです。最低限必要な条件でしょう。
そして、優れた歌手はさらに抽象度の高い世界から働きかけをしています。
つまり、情動(感情)よりも一段高い次元からの働きかけである。
彼女の歌のパフォーマンスはまさしくそれにあたると思う。
ジャッジの一人が
Your voice has a magic ability to invoke a sympathy.
と評価している。
「あなたの声は、共感を引き起こす魔法の様な能力を持っている。」
半分はあたったいるが、半分は間違いだ。
彼女の声はすでに、一つ高い次元からの写像に過ぎないのだ、もちろんそのエンコードされた歌声には、情報が載っている。
彼女の働きかけによって、観客の情動が引き起こされているのである。内部表現の書き換えである。
Amazing voice shocked the audience and Judges – Ukraine X-Factor
20世紀最大の催眠療法家ミルトンエリクソンに学んだ、ジョングリンダーと、バンドラーが創始したNLPでは、非言語の部分には全く触れられずにいる。
しかし、ミルトンエリクソン氏は、「彼らは半分しか学んでいかなかった。」としている。
最も大切な事は、言語抽象度を超えたところにある。
もちろん、バンドラーはその後TVショー等でも活躍して、彼自身非言語抽象度での働きかけを行っているし、その実力は認めるところではある。
しかし、巷で流行っている(流行っているのか?)NLP講座などでは、講師自体が全く非言語抽象度を理解出来ずに、授業が行われてしまっているのは惜しい気がする。(NLPそのものの限界なのだが。)
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